66 人生後半戦をイメージしよう~目的、目標、価値観からビジョンを描く


ライフスタイルを変えるのは、頭でわかっていても、なかなか行動に移せないものです。現在ではなく、未来に向けて考えてみましょう。

「人生100年は長い」とは言っても、人生後半戦に入るとすでに半分は過ぎているわけで、過去と未来では過去のほうが長くなっていくのは必然である。一方で、人生後半戦は未知の年代に入るのだから不安と希望が入り乱れる。
人生後半戦を考えるときに「過去を振り返る」という考え方もあるが、それ以上に「未来を見通す」という考え方を持つ必要がある。過去は変えられないが、未来は変えられる、あるいは過去のようにはいかないと考えるべきである。
第13章では、人生後半戦の未来を考えるために「職住隣接」という視点からお話しする。
人生の現在地の確認と人生後半戦のイメージ
人生100年時代と言われるようになって久しくなる。人生を100年を一気通貫で考えるには長過ぎる。人間は自分が生きてきた時間でしか未来の時間を考えられないとすれば、50歳で人生後半戦を考えるのは妥当だろう。
50歳を過ぎたら、100歳までの自分の未来をイメージしてみよう。人生のゴールは命が終わるときであるが、命の終わりをイメージするのではない。それまでに何を望み、何を実現しているのかをイメージするのである。
今までにこのような人生のイメージをしたことのない人にとっては、ハードルが高いこともある。過去の人生を振り返ることは誰でもできるので、今までの人生を思い出して欲しい。
物事を考えるときには、問題解決型と願望実現型の2つのパターンがある。ビジネスではしばしば問題解決型で考えることが多い。人生も同じように、目の前の問題を解決するように生きてきたのならイメージすることは難しい。
人生後半戦も問題解決型で生きるか、それとも願望実現型で生きるかは自分次第である。どちらをとっても現実は1つである。どのように考えるか、それが人生観になる。
人生にゴールはない、あるのはビジョンである
人生のゴールは命が終わるとき、すなわち、そこから先は自分では考えの及ばない未来になる。「人生にゴールはない」ではなく、ゴールに意味を持たせることはできないと考えてはどうだろう。
ゴールに向かっているという事実を受け止めて、ゴールに向かう間になにを考え、行うかがビジョンになる。「ビジョン(vision)」とは「視覚」を意味するが、視覚に訴える図画や映像だけではなく、言語化も必要になる。
むしろ、図画や映像は現実に近く、言語化のほうがイメージを膨らませやすい。また、その言語を読んだり聞いたりした人がさらにイメージを膨らませることが可能になる。人間が言葉を得た時から現在まで、未来のビジョンは言語化されてきた。イメージがわいたら言葉にしよう。
もうひとつ、ビジョンを考えるときに注意しなければならないことがある。「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」というドイツの鉄血宰相と呼ばれたビスマルクの言葉がある。
この原文を日本語に訳すと「自分の経験から学ぶ者は愚者であり、自分は間違いを避けるために他者の経験から学ぶ」となる。ビジョンからイメージすることは、自分の経験だけではなく、広く他者の経験を含めて考えるということになる。「イメージは広く考えよう。」
目的、目標、価値観の違いと関係
ビジネスでは「パーパス経営」「MVV経営」などの経営概念がある。パーパス(purpose)は「目的」を意味し、社会から見た企業の存在意義を中心に据える。MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)のミッションは自分から見た企業の使命を中心に据える。
人生を考えるときには、自分と社会の両面から考えることが望ましい。自己中心的な考え方だけでも、社会依存的な考え方だけでも、自分の人生のイメージはふくらまない。もし、イメージできたとしても、それは自分に都合の良いイメージになっていないだろうか。
「人生における目的、目標、価値観」は、人生を考えるときによく使われる。私も50歳になるまでは、この3つを繰り返し考えてきた。人生後半戦になって、両親の介護と自分の病気でこの考え方が大きく変わった。「目的、目標、価値観」は個別に考えるものではない。
実際に人生後半戦をイメージしたときに、まず思いつくのは個別の事象の「価値観」である。人生後半戦の「価値観」とは、未来に向けて必要か不要かという「価値基準」である。この「価値基準」を体系的にまとめると「目標」になる。「目標」も基準であるが、数値化できることとできないことがある。
そして「目標」を達成したときの世界観が「目的」となる。「目的」はパーパス(purpose)であるが、世界観から人生をイメージすることは、漠然とし過ぎてイメージしにくい。
ビジネス用語と比較しながら人生のイメージに必要な「目的、目標、価値観」を説明してきたが、重要なのはイメージの順番を「価値観>目標>目的」で考えることである。これを視覚化、言語化したのが「ビジョン」になる。まず自分の価値観を言葉にしてみてはどうだろうか。
人生後半戦を見える化するために
人生後半戦のイメージを見える化するために、3つの視点の組み合わせを紹介しながら、イメージを膨らませてほしい。ポイントは「3つの視点」ではなく、その組み合わせである。
1.衣・食・住
古くから知られている3つの視点に「衣・食・住」がある。「衣」とは身に着ける物、持ち物すべてを指す。「食」は口に入る物すべてを指す。人間の体は口に入る物から作られている。「住」は物理的な住居と住む地域を指す。これらをイメージするのは、案外簡単かもしれない。
2.老後の3K
老後の3Kとは「お金・健康・人間関係」とか「経済、介護、孤独」など、主に定年後の暮らしを指して使われる。「お金(経済)」とは収入と支出の管理、「健康(介護)」とは老化による健康状態の管理、「人間関係(孤独)」とは社会との関係を指す。すべて管理に関することであり、管理が苦手な人にとっては老後であろうとなかろうと見直す必要がある。
3.仕事・生活・人生
人生後半戦になると、生活のための仕事の比重が小さくなり、生活労働そのものの比重が大きくなる。加齢による体力や思考力の衰えによって、できることとできないことが明確になってくる。これを格差の原因と考えてはいけない。自分でこの差を認識し、予防し、対策しなければならない。そして人生は、仕事と生活だけではない。仕事と生活の他にもう1つ、あなただったら何をあげるだろうか?
ここでは、代表的な3つの視点をあげ、その組み合わせで人生をイメージすることができる。ただこれら3つにこだわることはない。ポイントは「3つ」という数字である。人生後半戦をイメージするには、何を3つめに置くかで、イメージの膨らみ方が変わるのである。
職住隣接は人生後半戦のモデル
職住隣接の「職」は仕事、「住」は生活を意味する。ただし、これは職業を持っている人の場合であって、職業を定年で辞めたり、引退している人にとっては「職」は仕事だけではなく働くことすべてを意味している。
「住」も仕事に相対する生活という意味ではなく、暮らしのすべてを意味する。人生後半戦になると、今までは仕事と家事の分担から、働くことと暮らすことの分担になる。これは家族内のことではなく、自分の時間配分が変わることを意味する。
仕事も生活も人生という時間軸の分類方法の1つであり、人生後半戦には働くことと暮らしの時間の分類に変わるのである。言いかえると、人生という時間軸を電車から自動車に乗り換え、たまには歩いてみるというような時間軸の乗り換えと考えてはどうだろうか。
職住隣接というライフスタイルも、仕事と生活の共存から、働くことと暮らし、そしてもう1つ何かを加えることで、さらにイメージを膨らませてみよう。








