88 SDGsの本質とこれからの世界の関係


SDGsが唱えられてから、新型コロナ過があり、その後の世界情勢の不安定は今でも続いています。このような中では、SDGsより喫緊の問題解決が必要です。ただ、世界情勢の見通しが立つまで、SDGsの本質を忘れてはなりません。

1945年の国際連合創設当初、世界が直面していたのは「東西冷戦」というイデオロギーの対立と、「南北格差」という経済的な不均衡であった。これらは、国家と国家が対峙する「インターナショナル」な枠組みで捉えられる課題であり、国連もまた真摯に取り組んだ。
しかし、国連創設から約80年が経過した現在、かつての課題は形を変え、より複雑な地球規模の「グローバル」な問題へと展開している。気候変動やパンデミック、サプライチェーンの混乱は、もはや一国では解決できないのである。
この新たな現実に対応するため、2015年に国連で採択されたのが「我々の世界を変革する(Transforming our world)」というアジェンダであり、その具体的な行動計画として17のSDGs(持続可能な開発目標)1が掲げられた。2030年を達成期限とするこれらの目標の本質は、貧困といった従来の課題に加え、自然環境、経済、社会の全てを統合し、持続可能な形で解決を目指すという、包括的な視点にある。
そして、このグローバルな課題解決の要請は、企業や組織のあり方にも変革が迫られている。複雑化した問題に対処するには、多様な人材の視点が不可欠だからである。そこで注目されるのが、人間を中心としたDEIの考え方である。
・Diversity(多様性): 年齢、性別、人種、価値観など、様々な違いを持つ人々が組織に存在すること。
・Equity(公平性): 個々の状況や特性に応じて、誰もが平等に機会を得られるよう、障壁を取り除くこと。
・Inclusion(包括性): 組織の全員が尊重され、安心して能力を発揮し、意思決定に参加できる状態。
SDGsが「何をすべきか」という世界の目標を示す一方で、DEIは、その目標を達成するためには「どのような組織であるべきか」という指針を示す。しかし、この理想的な関係は一直線に進んでいるわけではなく、近年ではDEIの推進に対する反発や、取り組みを縮小する組織が増えているという現実も存在する。
さらに言えば、「変革(Transforming)」を掲げる国連組織自体が、創設当初の国家間の枠組みから、グローバルに対応し、変革できていないという課題を内包している。
「理念と現実の複雑な緊張関係を理解し、その上でより良い未来をどう築くか」が、今の私たちに問われている本質的な課題となっている。
- SDGs:「持続可能な開発目標(SDGs)とは(国連)」
https://www.unic.or.jp/activities/economic_social_development/sustainable_development/2030agenda/ ↩︎



