仕事と生活の優先順位 ~人生後半戦で見直すマイルール

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仕事と生活の優先順位は、人生後半戦では大きく変化します。頑張らない、我慢しない、無理しない、新しい価値観で仕事と生活のバランスを考えています。

ワークライフはバランスからトランスフォーメーションへ

新型コロナ禍前は働き方改革、ワークライフバランスと盛んに言われていた。新型コロナ後になると仕事や生活に直結する経済問題のほうがバズワードになっている。

世界的な政情不安からエネルギー問題、そして円安による物価高騰と仕事と生活の双方に大きな影響が出ている。賃上げや○○円の壁などが政治の中心になっている。

このような世情の中では、ワークライフバランスは収入と支出のバランスをどのように取るかという現実的な問題に変わってきている。仕事は生活の支出のための収入源と化したのだろうか。

新型コロナ禍前のワークライフバランスや働き方改革の議論はなんだったのだろう。仕事自体、生活自体を変えずに、バランスや働き方という表面的なつじつま合わせになっていたのかもしれない。

働き方改革の中にはデジタルトランスフォーメンションがあるが、根本的なことを考えればワークライフトランスフォーメーションが必要なのだ。

優先順位は既に決まっている

仕事と生活は常に1人の人間の範疇にある。経済的にも時間的にも、そして1人の人間としての存在としてもである。同時に仕事と生活を行うことは不可能ではないが、それでは仕事と生活を分ける意味がない。

今までは仕事と生活を分けるほうが効率が良かったのだ。さらに効率を良くするために、優先順位を決め、持てる能力や時間を有効に使うように考えてきた。

優先順位の決め方は重要度と緊急度で決められる(図1参照)。重要であり緊急である⓵の領域を優先し、重要でも緊急でもない⓸の領域に持てる能力や時間を費やさないようにするのだ。

実際には、4等分の理論的マトリックスではなく、重要であり緊急である⓵の領域の該当する仕事や生活よりも、⓸の領域に該当する仕事や生活が多い。そして、現実的なマトリックスの⓸の領域で安心して暮らしたいと考えてはいないだろうか。

人生後半戦には⓸の領域で仕事も生活も過ごすことになるが、この中に見落としがちなことが隠れているのだ。この⓸の領域から⓶や⓷の領域で考えるべきことを移行すことから始める必要がある。

特に加齢による健康問題などは、⓸の領域で扱われることが多く、緊急と重要のチェックを怠ってはならない。新型コロナ禍で⓸から⓵の領域へ移動せざるを得なかったのは記憶に新しいはずだ。

ワークライフバランスの本質を再考する

ワークライフバランスを日本語に直すと「仕事と生活の調和」となる。バランスには調和という意味があるが、イメージするのは(図2)のシーソーの上で均衡を保っているような状態だろう。

バランスとは静止している状態ではなく、シーソーのように常に動きながら調整している状態だところが、シーソーの両側が共に重くなればシーソー自体が壊れてしまう。

では、仕事と生活のバランスをシーソーに例えると、左側に仕事、右側に生活が乗っていると状態だとする。ここで仕事と生活を乗せている棒状と視点となっている三角形は何を意味するのだろうか?

棒状の部分、つまりシーソーの本体は、時間であり、お金であり、家族環境など、個人の状況によって違うし、複合的なこともある。仕事と生活の負担が重くなると、この棒状のシーソー自体が折れてしまう。

そして三角の支点は、優先順位の基準である。一般的には、重要度と緊急度として説明されるが、実際には具体的な基準を意味する。例えば、命にかかわるのか、手持ち資金がなくなるのかというようにである。

バランスがとれないときにはどうすべきか

シーソーやてこの原理は小学校と中学校で学習する。支点、力点、作用点がわからなければ、ネットで調べるか、NHKのEテレで学んでほしい。生活に役立つ学習内容である。

バランスが取れないときは、傾いている(重い)方を支点(中央)に近づけるとバランスがとれる(図2)よう(図2)。ただこれでは実生活には役に立つとは言えない。

もう1つの方法は、支点を傾いていうほうにずらすとバランスを取る(図4)ことができる。支点は基準であるので、時間なら傾いているほうに時間をかけ、お金なら傾いているほうに支払いを多くすることになる。

ここで重要なことは、支点は三角形で動かせないと決めてかかることだ。支点を丸くすれば、状況によって視点を変えて、傾いているほうにいつでも近づける(図5)ようにするのだ。

支点は動かせない、仕事や生活の位置をずらせないという固定観念や、試しに動かしてみようという変化へ対応することが重要なのだ。

ただし、これだけでは問題は解決しない。

不要不急から生涯現役へ~生活習慣の見直し

ワークライフバランスから、ワークライフトランスフォーメーション(WLX)に移行するには、今までの自分と現在の自分、現在の自分とこれからの自分について考える必要がある。

これらの「考える」という思考作業は自分で行うことをお勧めしたい。誰かの力を借りるよりも自分で行うことで、これからお話しすることがより理解しやすくなるからだ。

1.不要不急の領域を洗い直す

優先順位をつけるための「重要でなく緊急でもない領域⓸」を「不要不急の領域」とする。この領域で人生後半戦を過ごすことは、定年後はのんびり暮らす人にとっては快適な領域かもしれない。

しかし、この領域には隠れ領域があり、重要であったり、緊急であったりする領域が隠れていることがある。人それぞれこの領域の大きさは異なるので一概には言えないが、見直すポイントはこれからの記事で随時お話ししていく。

2.生活習慣の中の悪習を正す

人生後半戦になっても、少なからず直したい習慣はあるものだ。もう年だし変える気はしない、というのも1つの考え方である。であれば、その習慣が人に迷惑をかけていないか、これからも迷惑をかけないかを考えるだけでもいい。

日本は民主主義国家である。少数の考え方や生き方も尊重はするが、社会のルールをそのような人たちのためには変更しないし、できない。自分の身は自分で守るしかない。

3.生涯現役でいる考えはあるか

生涯現役の意味は「死ぬまで働く」と受け取られがちだが、働くだけが生涯現役ではない。死ぬまで続けたいことと考えて欲しい。このように考えるとたくさんはなくてもいくつかはあるだろう。

朝起きてから眠るまでの間に毎日行っていること、毎週行っていることはあるはずだ。定期的に行っていることを、行いたいことをあげてみて欲しい。

1~3を実現しようとすると、必ず基準が必要になる。この基準がこの章でお話しするマイルールになるのだ。

優先順位を決めるための3つのこと

1.基準は変えられる

自分が選択するときに用いている基準は、自分で変えられる。例えば、朝7時に起きると決めていることも、体調が悪ければ起きなくてもよいのだ。

私は、ワークライフバランスで示したシーソーの棒状の本体部分が健康管理が多くを占めている。心臓に持病があるので、血圧や脈拍、体調などでその日の朝に基準を決めている。

したがって、朝目が覚めてから行うことは、自己分析>自己理解>自己管理の順番で、その日の基準と一日の過ごし方を決めるのだ。つまり、私の基準は健康状態次第である。

2.例外は受け入れる

自分で基準を決め、予定を決め、仕事や生活でいろいろな活動をこなしていく。当然、お腹も空けば、疲れも出る。あともう少しやりたいというときも、予定の時間が来たら止めるようにしている。

私には「頑張らない、我慢しない、無理しない」という不文律がある。最初は、健康管理のためのルールだったが、習慣以上に無意識にこれらを実行するようになってから悩みが少なくなった。

それは、たまに例外を自分で受け入れるからである。子供や孫が来たときは例外にしている。ただし、次の日は疲れて一日寝ているのだが、例外は月に1回くらいならよいものだ。

3.他者と基準を共有する

仕事と生活は自分だけの生活だけではなく、社会生活も行うことになる。この時には、社会のルールを優先させなければならない。当たり前のことである。

ただし、自分のマイルールを打ち明け、共有してもらうこともある。特に私の健康や体調によっては、他者と時間を共有することができないこともあるし、予定通りに行えないこともある。

私からの一方通行ではなく、双方向の基準の共有である。これは情報共有よりも大切で、人生後半戦には考えなければならないことだと考えている。

人生後半戦は、いくつマイルールを持てるか、それは「〜しなければならない」ということではなく、「〜するための基準」である。成功の法則、幸福の法則、人生の法則よりも、マイルールを持つことが生きがいにつながるような気がしてならない。

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