職住隣接のセキュリティと孤独感~新しい時代の課題と可能性
在宅ワークの二つの課題、セキュリティと孤独感。この新しい時代の働き方が突きつける問題にどう向き合うべきでしょうか。
セキュリティと孤独感
職住隣接に在宅ワークはつきものであるが、デメリットとして孤独感を感じると漏らす人が多い。こう言葉にするだけでも時代は変わったと思うが、一方で仕事の情報も漏れてしまう可能性がある。
在宅ワークのデメリットとなる大きなリスクは2つある。1つは、在宅ワークのルールをいくら決めて管理しても、モラルまでは管理できないこと。
もう1つは、ひとりで仕事をする孤独感、疎外感である。職場では必ずしも常に共同作業を行っているわけではないが、同じ場にいる一体感の裏返しである。
まず、組織側のデメリットとしてのセキュリティリスクの管理、次にひとりで仕事をする際の孤独感について述べてみたい。
組織側の大きなリスクであるセキュリティ
組織側として最もリスクと感じているのは、セキュリティの問題である。組織内の情報を組織外に持ち出さないこと、漏らさないことは、文書で誓約しているし、暗黙の了解でもある。
そうは言っても、外部からのセキュリティを破られるのを防ぐより、内部からセキュリティを破るような行為を防ぐのは難しい。在宅ワークとはセキュリティ対策が弱いということは理解しておかなければならない。
セキュリティ対策のために職場で働くのは相互監視の意味もある。しかし、いまでもパスワードを安易に教えたり、アクセス権を貸したりして仕事をしている組織もある。ルール違反どころかモラル違反である。
私の場合の孤独感との向き合い方
私は基本的にひとりでいることに不安を感じたことはない。むしろひとりでいる時間を楽しんでいる。幼少から大家族で自分の場所や時間がなかったことの反動があるのかもしれない。
今の時代なら、学校も登校拒否か、通信教育を受けていたかもしれない。仕事もサラリーマンではなく、ひとりで仕事をすることが多い研究職か、技術職を選んでいたかもしれない。
ただ、現実的には、周りからは社交的だと思われているし、話をよく聞いてくれる人だと思われている。人生とはこのように、必ずしも自分が向いていることと、他者が自分に期待することは違うのだ。そう思って続きを読んでいただきたい。
在宅ワークの孤独感とは
私の職住隣接は2つの段階があった。家族と同居しているときは、孤独感というよりは集中したい願望のほうが強かった。今のようにほぼひとり暮らしの場合は、家族との会話がないことが寂しいときもある。
新型コロナ禍で在宅ワークは、やはり孤独感を感じるという人がいたので、4人でスマホにお互いの画像を映すようにしていたことがある。音声はなく、画像だけだ。用事があるときはチャットで行った。
これだけで孤独感を感じている人の気分が落ち着いたようだ。チャットには、昼食の話題や、PCの調子がおかしいなどの職場では当たり前の会話ばかりだ。家族とは、もっぱらLINEで会話していた。両方とも古いPCを専用に使っていた。
在宅ワーク時の孤独感とは、誰かと会話できる、つながっているという感覚なのだろうと思う。これをよしとするという人にはメリットであり、好しとしない人にはデメリットになる。
仕事とプライベートのオンとオフ
仕事とプライベートのオンとオフが曖昧になるという人もいた。私は仕事スペースと生活スペースを完全に分けている。仕事スペースには仕事に関係あるもの以外ほとんど置かないし、生活スペースで仕事上の本も読まない。
スマホも仕事用とプライベート用を分けている。仕事中は生活スペースに置き、着信があればスマートウォッチに転送される。このように物理的に置き場所を分けている。
仕事をするときは、上半身はカットソーか襟付きシャツを着て、いつでもビデオ通話に出れるようにしている。ただし、リラックスするために靴下だけは履かない。
仕事とプライベートのオンとオフは、見える形にすると切り替えができるように思う。もっとも最初のころは、仕事モードに切り替えるためにコンビニまでコーヒーを買いに行っていたこともあった。
集中、コミュニケーション、食事、休憩
集中するためには2つの方法を使っている。1つはBGMを流して常に同じ環境を演出すること、もう1つは本格的に集中したい時は、ノイズキャンセリング機能があるイヤホンやヘッドホンを使っている。
コミュニケーション、つまり電話、ビデオ通話、メール、チャットは午前中は原則として行わないことにしている。一応、相手によっては「後で連絡します」とだけ伝えるように設定している。
食事は朝7時台にワンパターンの朝食、14時ごろに昼食で麺や肉など好きなもの、この2回で1日の栄養は取り終わる。夕方は17時くらいに温野菜と魚を少し食べる。酒は飲まない。
休憩はポモドーロを取り入れている。22分集中-1分休憩-22分集中-15分休養、計60分を繰り返す。私は、心臓に持病があるので、血圧と脈拍に常に注意していなければならない。再発すれば命にかかわるからだ。
このサイクルが1番安定するのだが、試行錯誤に1年半かかっている。人生後半戦になると仕事と生活と健康のバランスを常に考えることが重要だと、実体験をとおして思っている。
職住隣接というライフスタイル
在宅ワークはワークスタイルであるが、職住隣接はライフスタイルである。毎日の仕事と生活をパターン化するとメリットやデメリットを解消する方法を試行錯誤で考えつくものである。
自分に合ったパターンを見つけるには時間がかかるし、他の人のパターンを参考にしてもあわないこともある。このパターンを探すことを楽しむことができれば職住隣接も楽しくなる。
試行錯誤と言えば、私が実家で暮らしている理由の1つに、近年、問題視されている空き家問題の対策を兼ねている。実際には、空き家問題以上に空き部屋は多く存在しているのではないだろうか。
子供が独立した後の部屋が物置になっていたり、すでに不用になったものを捨てずに空き部屋に溜め込んでいたりしている部屋はないだろうか。
空き家問題の解決策としても、職住隣接を始めるチャンスになるかもしれない。しかし、それ以上に重要なのは、個人に合った働き方と暮らし方を見つけることである。
職住隣接は、単なる働き方の選択ではなく、生活全体を見直す機会となる。それは人生後半戦における新しいライフスタイルの確立につながるのではないだろうか。