職住隣接と地域コミュニティ~公共施設と共用サービスの利便性

職住隣接と地域コミュニティ~公共施設と共用サービスの利便性
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地域の共用サービスを活用することで、職住隣接の共用スペースが広がり、自宅という範囲からさらなる可能性を考えることができます

私が使っている共用サービス

共用スペースは自宅だけではなく、地域の共用スペースという考え方もできる。例えば、図書館や地区の会館などの公共施設、コワーキングスペースやシェアオフィスなどの仕事用施設がある。そのほかにも大学やホテルも共用スペースとして開放している場合もある。

日常生活では、コンビニエンスストアは生活にも仕事にも欠かせない。特にマルチコピー機やATMは24時間対応なので便利である。また、ネットショッピングの配送サービスも職住隣接には欠かせない。これらは共用スペースの枠を超えた共用サービスといえる。

移動手段として、公共交通に加えてカーシェアのサービスも私には不可欠となっている。急ぎの用件のときはタクシーや自転車よりもカーシェアが使い勝手が良い。私の場合は近くに複数のカーステーションがあるのでなおさらである。

食事や買い物では、地元スーパーのオンラインサービスをよく利用する。実際スーパーの店頭からピックアップしてくれるので、品揃えや価格がわかるので便利である。私は減塩食の食事療法を続けているので、調理が面倒くさいときは減塩の冷凍食品をよく利用する。

家事の面では、コインランドリーも職住隣接を始めてからよく使うようになった。毛布などの大物の洗濯以外にも、大型の乾燥機があるのは、冬場には大いに助かっている。このように考えると、普段何気なく利用しているサービスも、地域における共用のひとつといえる。

地域を共用スペースとして考える

「公共」の意味は、共同利用できる公の施設や事業であるが、「公(おおやけ)」だけが強調され、共同利用していることを忘れてはいけない。例えば、住宅地にある公園は自治体の所有であることが多いが、利用しているのは居住者である。

つまり、自治体の所有とは共有であり、居住者の利用は共用である。公園の掃除や維持は利用者が行なうべきだという考えと所有している自治体が行なうべきだという考え方がある。実際にこれは私が経験した話であり、私は前者の考えだ。

共有と共用の違いを理解しなければ、このような認識の違いが生じる。地域の公共の場は自治体の所有で管理されているが、共用の場として考えるのであれば大切に使うだけでなく、より広い使い方ができるように思う。

正しい共用意識がもたらす影響

地域の共用サービスは、利用する側の意識によって、その価値が大きく変わる。しかし、現実には様々な制限が設けられている。例えば、公園でのペットや自転車の禁止、夜間の利用制限などである。これらの制限は、一部の利用者のマナー違反や騒音問題などが原因となっている場合が多い。

共用という考え方は、利用者の権利だけでなく、責任も伴うものである。地域の施設やサービスを効果的に活用するためには、利用者同士が互いを思いやり、ルールを守る意識が必要になる。そうすることで、より柔軟な利用方法も可能になるのではないだろうか。

このような地域での共用の考え方は、自宅のスペースの有効活用にも影響を与える。地域の施設やサービスを上手に利用することで、自宅に本当に必要なスペースや設備を見直すことができる。

地域の共用スペースの目的

地域の共用スペースには2つの利用目的がある。ひとつは自宅のスペースを補完する機能として、もうひとつはコミュニティに必要なコミュニケーションの場としての機能である。しかし、現在では地域コミュニティという考え方が薄れてきており、地域で共用する機会も少なくなっている。

地域のコミュニティを維持するのは、直接的な対面での会話を行う高齢者が多い。また、高齢者が活動しやすい平日の日中にコミュニティの行事が多いので、年齢的な片寄りも起きている。若い世代や現役世代は、休日に同世代や同じ嗜好の仲間と交流を求める。

地域の共用スペースを利用できるのは、共用スペースまで足を運べる人である。つまり、交通機関や歩くことが不自由な人は遠方からの参加はできない。もし地域のコミュニティを維持するのであれば、コミュニティ側から地域の人の元へ足を運ぶ必要がある。

自宅スペースを補完する

自宅スペースを補完する機能としては、公共施設よりも前述の共用サービスのほうが有効利用できる。今後は公共サービスは公共福祉として活用されるようになり、民間の共用サービスが実生活に結び付いて様々な分野で供給されるだろう。

民間の共用サービスはデジタル化なくしてサービスが成立しなくなっている。公共サービスのデジタル化が進めば公共施設の利用も変わるかもしれないが、都市部以外での浸透は期待できない。それは利用者の高齢化だけではなく、供給側の自治体の高齢化の影響もある。

自宅スペースを補完するためのサービスとは、デジタルサービスでは補いきれない現物のストックやデリバリーが中心になる。備品や消耗品のスムーズな補充は生活維持に不可欠であるし、また、安全安心を保証する災害時や緊急時のサービスである。特に後者は公共サービスが中心になる。

理想的な地域の共用スペースとは

地域の共用スペースを考える上で、地域の特性を考慮しなければならない。ただし、地域の特性には過去・現在・未来の特性がそれぞれある。どこに焦点を当てるかは当事者としての地域のコミュニティで決めるべきであるが、ここでは一般論としての願望として読んでいただきたい。

地域コミュニティと言っても、地理的な広さと人口の多寡によっても異なる。地域のイメージは街並みの区割りにも影響されるので数値では定義しづらい。むしろ同じ規模の地域コミュニティ同士での交流で、
発展的な仕組みが考えられるのではないだろうか。

私見ではあるが、いくつかの比較基準をあげてみる。

  • 高齢化率が全国平均(29.8%)より高いか
  • コミュニティの設立から何年経っているか
  • 地理的特性(広い、密集)はあるか
  • コミュニティ内の主たる移動方法は何か
  • 自治会がある場合は加入率は高いか
  • 自治体の施設までの距離は近いか
  • 小学校校区は広いか(避難場所)
  • 商業地域(コンビニ含む)はあるか
  • スマホのキャリアショップはあるか

これらはほんの一部であるが、共通していることがある。それは困ったときに、誰に頼るかということである。これらの基準から、そのコミュニティの特性が垣間見えてくる。地域コミュニティと親交を深める必要をお分かりいただけただろうか。

職住隣接の仕事と生活でそれぞれ困ったときに誰に頼るかを自らに問いかけたときに、仕事で地域コミュニティへの相談よりも、圧倒的に生活で頼ることが多いのは容易に想像できる。地域コミュニティとは仕事で頼るのは地域の特性があるとき、例えば1次産業などの場合である。

自宅が生活中心に設計されているように、地域コミュニティも生活中心に制度設計されているのである。つまり、自宅で仕事を行うときには、地域コミュニティとの関係も無視できないということを忘れてはならない。

職住隣接物語