生活の中のコミュニケーション~職住隣接で広がる多様な人間関係
職住隣接における3つのコミュニケーションパターンを紹介し、それぞれの特徴とどのように使い分けているかについてお話しします。
在宅ワークは職住隣接の一部である
このブログ「職住隣接物語」を始めた頃、在宅ワークと混同されることがよくあった。そのため、仕事と生活の境界が曖昧になるのではないかという意見を耳にすることも多かった。
職住隣接とは、生活スペースと仕事スペースを自宅内で明確に分けることで、仕事を生活に持ち込むのではなく、それぞれを独立させる方法である。
この方法で時間と場所を分けることができたが、家族や友人、地域コミュニティとの人間関係が同時進行することで、仕事と生活の区別が難しくなることもあった。
コミュニケーションを相手によって切り替えているつもりでも、スムーズにいかないことがストレスの原因となることがある。特に私のように持病を抱えていると、このようなストレスは避けたい。
そこで私は、コミュニケーションのあり方を3つのパターンに分けて考えるようにしている。まだ完全には運用できていないが、この方法について紹介しながら考えていきたいと思う。
3つのコミュニケーションの違い
職住隣接で行われるコミュニケーションには、3つのパターンがある。それぞれの違いについて、私が感じていることをお話しする。
*家族や親しい友人知人とのコミュニケーション
・敬語や丁寧語をあまり意識せず、自然体で話す
・会話に連続性があるため、言葉を省略したり指示語を多用する
・プライベートな話題から他愛もない話まで、幅広い会話ができる
*地域コミュニティでのコミュニケーション
・基本的な敬語や丁寧語を使い、誤解を避けるように気を配る
・会話に連続性がないため、慎重に言葉を選ぶ
・プライベートな話は避け、世間話やその延長線上の話題が中心
*仕事上のコミュニケーション
・丁寧語や敬語を常に意識し、書き言葉のような話し方になる
・会話に連続性はあるものの、より注意深く言葉を選ぶ
・公式な話が中心で、限られた時間内で決められた範囲の話をする
これら3つのパターンが混ざり合うことや、どのパターンにも当てはまらないコミュニケーションも発生する。そのような場合は状況に応じて柔軟に対応している。
基本的なコミュニケーションの方法
特に用件がない場合、コミュニケーションの方法にはあまりこだわらないことが多い。ただし、そうしたコミュニケーションに長い時間をかけすぎない方が、お互いに良い印象を持てる。
*家族との用件
家族に用件がある場合、順不同で話すことが多く、相手の知識レベルも把握しているため、時間をあまり気にすることはない。直接話すこともあれば、チャットツールを使うこともある。
*地域での用件
地域での用件は、簡単なメモを用意したり、メモを取るようにしている。伝言程度の内容が多く、重要な話は仕事と同様の方法で行う。直接話す機会が多いので、ツールの利用を希望している。
*仕事上での用件
仕事では、あらかじめ文字にして準備し、どれくらい時間がかかるかを確認する。メールやチャットツールでのやり取りが主流だが、最終的には直接話す方が良い場合もある。エチケットやモラルには十分注意している。
コミュニケーションには決まったルールはなく、その代わりに暗黙のルールが存在する。このルールは相手によって異なるため、家族、地域、仕事それぞれで適切な方法を意識する必要がある。
「おい、あれ、できたか?」
私の経験を少しお話ししよう。
会社勤めをしていた頃、上司や先輩からよく「おい、あれ、できたか?」と尋ねられることがあった。最初は戸惑ったが、仕事上の用件であることが多いため、次第に何を指しているのか予測できるようになり、スムーズにコミュニケーションを取れるようになった。
家族でも同じように「あれ」と言われても、大体の想像はつく。わからない場合は聞き直せば済む話である。ところが、地域でも同様に「あれ」で済ませる人がいる。特に高齢の男性に多い。
いずれにせよ、口頭で即時に返答を求められることが多い。この直接的な口頭でのコミュニケーションを長年続けている人は、この方法が最良だと思っているのだろう。ただ、その人にとってはベストでも、相手にとっては必ずしもそうではない。
介護でわかった第4のコミュニケーション
私がコミュニケーションについて本格的に悩んだのは、両親を介護するようになってからだ。特に認知症が進行してからは、記憶力や理解力、伝達力が低下し、コミュニケーションが容易ではなくなった。
最初の頃は私も感情的になってしまうこともあった。それは前述の3つのコミュニケーションパターンには当てはまらなかったからだ。そのうち気づいたのは、相手とコミュニケーションを取ろうとしているのではなく、自分が確認するために独り言を言っているようなものだということだ。
この理解から、前述の3つのパターンにも応用できるようになった。必要に応じてではあるが、まず相手の言葉に「そうですね」と頷くことから始めている。これは肯定ではなく、「聞こえていますよ」という合図になるからだ。
報連相(ほうれんそう)と確連報(かくれんぼう)
コミュニケーションという言葉は、英語で「伝達」や「通信」を意味するが、日本では「意思疎通」を指し、双方向の理解を意味することがある。
仕事の場では、「報連相(報告・連絡・相談)」がよく知られており、さらに「確連報(確認・連絡・報告)」という手法もある。これらは職場での円滑なコミュニケーションを支えてきた。
こうした仕事のコミュニケーション方法が家族や地域でも同じように受け入れられるわけではない。仕事では正確性が求められる一方で、家族や地域では曖昧さが好まれることもある。
この違いは、リアルタイムな口頭での方法から、文字やツールを使ったタイムラグのある方法への変化によるものである。
話し上手、聞き上手
口頭でのコミュニケーションが成立するのは、「話し上手、聞き上手」という人たちがいるからである。同様に、文字でのコミュニケーションを円滑に行うためには「読み上手、書き上手」というスキルが求められる。
日本人は識字率が高いとされているが、文字を読む力があっても書く力があるとは限らない。文字を使って伝えることに苦手意識を持つ人もいるが、状況は変わってきている。
PCやスマホを使う場合には字の上手い下手は影響しないことや、最近の文章作成時における補助機能の進化により、読み書きは以前より身につけやすいスキルになっている。
コミュニケーション方法と人間関係
かつては、同じ言語を使わないとコミュニケーションができなかった。時代とともにコミュニケーション方法が変わると、人間関係の築き方も変化する。
声から文字への移行や、電話からインターネットへの変化は、私たちの日常生活に大きな影響を与え、コミュニケーションの方法まで変えてきた。
職住隣接というライフスタイルをとり入れる際には、3つの異なるコミュニケーションスタイルに対応し、時代に合った方法を学ぶことが必要である。
多くの言語を学ぶことで多くの人とコミュニケーションを取ることが可能になる考え方も、今では多様なコミュニケーション手法を学ぶことで、多くの人と繋がることができる時代になっている。
言語の壁は自動翻訳などの技術によって徐々に取り除かれ、文章作成の壁もAIなどの技術によって低くなりつつある。
これらの変化を恐れるのではなく、日常生活に取り入れることで、より多くの人とコミュニケーションを取れるようになるだろう。