3つのスペースの関係性 ~ 基本構成の確認

3つのスペースの関係性 ~ 基本構成の確認
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職住隣接の仕事スペースと生活スペースの関係性を、私が実際に行っている具体例と経験談を交えてお話ししていきます。

「職」と「住」の関係性を変える

仕事と生活の関係を表す言葉には、職住分離、職住一体、職住近接のライフスタイルがある。

これまで日本では職住分離が一般的であったが、近年は働き方改革やワークライフバランスの観点から、職住近接や在宅ワークを取り入れる組織も多くなっている。

これらの概念と異なり、職住隣接とは、同じ住居内に仕事と生活の独立したスペースを設け、物理的な近さを保ちながらも、時間的・心理的な独立性を確保するライフスタイルを指す。

以下に、それぞれの特徴を整理する:

職住分離:仕事場と住居を物理的に離し、時間的・心理的にも明確に区分する従来型のスタイル
・職住一体:仕事と生活のスペースや時間が混在し、区別なく一体化したスタイル
・職住近接:仕事場と住居が近接し、通勤時間の短縮を図りながら、適度な距離感を保つスタイル
・職住隣接:同一住居内で仕事と生活の空間を分け、独立性を保ちながら効率的に活動するスタイル

職住隣接の3つのスペース

職住隣接には3つのスペースがある。仕事スペース、生活スペース、そして両者をつなぐ共有スペースだ。

仕事スペースは独立した部屋として設けている。私の場合、玄関を挟んで生活スペースと分かれており、集中して仕事ができる環境になっている。

生活スペースには寝室、台所、風呂などの水回りがある。ひとり暮らしになってからは、テレビを中心とした従来の居間を、家具のない多目的スペースにレイアウト変更した。

共有スペースは玄関を中心に、トイレ、車庫、2階への階段がある。以前は介護道具を置いていたため、比較的広いスペースを確保している。

この3つのスペースで最も重要なのは、仕事と生活の完全な分離だ。玄関という共有スペースが両者の間にあることで、仕事モードと生活モードの切り替えがスムーズになる。

3つのスペースの3つの役割

仕事、生活、共有という3つのスペースには、物理的、時間的、心理的な3つの役割がある。私たちは知らず知らずのうちに、場所と時間で心理状態が自然と変わるようになっている。

このような習慣は小学校から始まり、社会人になっても続いているため、条件反射のようになっているのかもしれない。ただ唯一違うのは、見られているという感覚がないことだ。

そのため、見られていないからいいだろうという習慣破りを起こさないように、マイルールを設けている。例えば、「仕事スペースには生活スペースのものを持ち込まない」というようにである。

仕事スペースは仕事、生活スペースは生活、では共有スペースの役割はというと、気分転換のために使っている。トイレも共有スペースなので定期的に気分転換できるのだが、さらに重要なポイントがある。

それは玄関という外界への出入り口があることだ。人それぞれに、いろいろな気分転換の方法があると思うが、私の場合は外へ出て深呼吸をすることが一番効果がある。

人生後半戦の職住隣接

人生後半戦になるまでに、仕事の仕方や生活の仕方は人それぞれスタイルがある。スタイルとは、様式や流儀を指し、仕事や生活のどちらにも無意識の習慣として定着している。

自宅で職住隣接を行う場合、生活のスタイルは人それぞれであっても、仕事のスタイルは職場でのやり方をそのまま自宅でも行える、と安易に考えていないだろうか。

例えば、仕事上でわからないことがあれば同僚に聞く、仕事時間も昼休みも決められた時間を守る、職場の備品や設備はあって当然と考えているが、自宅ではそうはいかない。

仕事の主たる部分だけを行えばよいわけではなく、付随する作業も自分で行わなければならない。実際に在宅ワークを行う際の不便さは、このような作業にこそある。

職住隣接の便利さと不便さは、在宅ワークだけに関係すると思われがちだが、実は生活の場が近いことによる影響のほうが大きい。

例えば、便利な面では、子育てや介護などの生活範囲の日常を並行して行える。一方で、これまで疎遠だった地域コミュニティとの関わり方も必要になるという課題もある。

多様なコミュニケーションへの対応

職住隣接でのコミュニケーションには、仕事上、家族など親しい間柄、地域コミュニティと3つに分類できる。

また、相手によってコミュニケーションスキルに差があるため、すべてのコミュニケーションに対応するには多様な方法が必要になる。

私も当初はすべてのコミュニケーションに対応しようとしたが、時間的なロスが大きいため方針を変更した。対面でのコミュニケーションとリアルタイムのやり取りを必要最小限にしたのだ。

具体的には、直接会う、電話やビデオ通話、リアルタイムのチャット、急ぎのメールなどに対応する相手を限定することから始めた。連絡手段も仕事用のスマホで対応できる項目に絞った。

現在は、ショートメール可能な留守番電話付き電話番号と、独自ドメインのメールアドレスの2つだけを連絡先としている。LINE、X(Twitter)、Facebookなどのアカウントは非公開にしている。

家族や親しい間柄にはプライベート用のスマホで対応し、地域コミュニティについては、仕事用の連絡方法を理解している人とのみ交流を持つようにしている。

「職住隣接」の地理的条件とは

職住隣接を実践するためには、なくてはならない条件がある。誰でも、どこでも、無一文でも可能になるわけではない。その中でも特に重要なのは、ルートの確保である。

ルートには、電気・交通・通信という物理的なルートと、人的・情報・公的な非物理的なルートがある。これらを複数確保できる環境でなければ、安定した職住隣接は実現できない。

それぞれのルートについては、今後の記事で詳しく紹介していく。

職住隣接物語