住と生活の役割 ~人生後半戦における住まいの意義
人生後半戦における「住」の役割と、職住の関係やライフスタイルの変化を3つの視点から考察します
「職住」と「住」の関係
「職住」の「職」とは仕事の場、「住」とは住居すなわち生活の場を指す。これだけではワーク・ライフ・バランスのことかと考える方も多いだろう。
このようなアプローチではなく、ライフスタイルからのアプローチもある。まず、「ライフ」には大きく3つの意味がある。「生活、人生、生命」だ。
ライフを生活と考えれば、日常の生活様式が中心になるし、人生と考えれば生き方や人生観となる。ライフを生命と考えれば、生きることそのものであるが、健康的に生きるということになる。
「住」とライフスタイルの関係は生活が主になるが、その背景には人生と生命もあると常に私は考えている。職と住を合わせた「職住」は、自分の生き方を反映させるライフスタイルになる。
住居という場所
1日を時間の使い方で分けると「仕事、生活、睡眠」の3つに分けられる。通勤時間や休日の仕事関係の電話などは考え方が分かれるが、基本的にはこの3パターンになる。
どこにいるかで分けると職場と住居、そして職場でも住居でもない第3の場所がある。スターバックスだけではなく、移動時間や外食、買い物などたくさんある。
人間関係で考えるとまた違ってくる。ひとり暮らし(独居)であれば、職場での人間関係のほうが多いかもしれないし、同居の場合は職場と住居での人間関係は使い分けているだろう。
もう1つだけ、睡眠の時間は生活時間に含めて考えるのが一般的である。睡眠場所は住居で、睡眠中は基本的に人間関係は発生しない。
以上のように時間、場所、人間関係という3つの観点から、私たちは「住」に何を求めているのかを考えてみたい。
人生後半戦に重要な「住」環境
人生には複数のステージがあり、世代によっても状況や環境が異なる。人生後半戦というステージの「住」は、持ち家か賃貸か、単独世帯か同居世帯かによってもライフスタイルが異なる。
このようにいろいろな世代の住環境を分類すると「職住」と住の関係性が複雑になるので、人生後半戦に加えて3つの条件を加えてみたい。
1.学校教育を受けた経験がある
2.組織での就労経験がある
3.現在、基本的な生活が成り立っている
これらは法律で守られている義務または権利なので、この3つが大前提となる。もし、この3つが満たされていない場合は、すぐに公助を受けるべきだろう。
「住」はライフスタイルの基本になる
「住」で一番重要なのは、睡眠を安心して、安全に、安定的にとれる場所であることだ。「住む」は「棲む」と書くことがある。「棲」の意味は、眠る場所という意味でもある。毎日の睡眠は生きていくために重要なのだ。
「住」を生活の基盤として考えている人も多いだろう。生活の基盤とは、国民として戸籍と住民登録に必要なのが「住」のあるところ、すなわち住所である。経済的基盤も生活基盤も「住」がなければ始められない。
「住」と人生の関係は、最近になって一段と流動的になっている。どのような人生を送りたいかによって「住」を選べるようになったといえる。ただし、人生後半戦では終の棲家としての住も考えなければならない。
職と住の比較ではなく、職と住の位置づけ
「職」と「住」の関係は、比較や共存を考えることで、社会の中でどのように共生していくかという考え方がある。私の考えは「職」と「住」を人生の中にどのように位置づけるかということになる。
例えば、研究者という職業は、定時で働くのではなく、1つの結論が出るまで働く。研究室だけでなく、食事をしているときも、寝ているときも考えている。定時ではなく期間で働く職業ともいえる。
サラリーマンの場合は、基本的に定時で働くことが条件になっている。つまり時間内ですべての業務を行う責任があるし、終われるような業務体系でなければならない。定時以外で働いてはいけないのだ。
極端な言い方であるが、時間を基準にするとこのように考えられる。では、職場と住居に明確な境界はあるだろうか。ないのであれば、自分で境界を作ることから考えなければならない。
人生後半戦になると、今までのライフスタイルを変えることには違和感があるかもしれない。なんの不便もないと考えているなら、10年後の生活、人生、健康を軸にして考えてみてはどうだろうか。