職と仕事の違い ~ 日常会話で使う「仕事」のイメージ
「お仕事は?」「ご職業は?」という日常的な問いの違いから、「職」と「仕事」の本質的な意味を探ります。単なるあいさつの中にも意外な意味が・・
「お仕事は?」「ご職業は?」には違いがある
日常会話で「お仕事は?」「ご職業は?」という質問をよく耳にする。一見似ているように見えるこれらの質問には、それぞれ異なる意図と文脈がある
「お仕事は?」と聞かれたら何と答えるか
「私の仕事は〇〇〇です」と答えるわけだが、この「〇〇〇」には相手のイメージしやすい答えを入れているのではないだろうか。
例えば、「会社員」「公務員」と答えれば、「職場で定時で働いていて、土日は休み」などがイメージしやすいだろう。業種、職種、役職までは答えない。
他にも「私はこういうものです」と言って名刺を差し出すこともあるだろう。名刺には、業種、職種、役職だけでなく、連絡先まで載せているのが一般的である。
「職」を職業、「仕事」は「職」よりも広い意味で、現在働いている状況の一部を示すという説明もある。確かに、主婦という職業はないが、「お仕事は?」と聞かれて「主婦です」と答えても違和感はない。
つまり「お仕事は?」というのは、あいさつに続く社交辞令的な要素が多く、「いいお天気ですね」となんら変わらないのかもしれない。
「ご職業は?」と聞かれたら何と答えるか
一般的な職業名がある場合は、業種と職種、例えば「食品関係の営業です」のように答えることができる。状況によっては「〇〇〇会社で〇〇〇を担当しています」のように答える。
ただ、これだけで自分の人となりがわかるわけもなく、たとえ名刺を渡したとしても、前日に入社したのかキャリアを積んでいるのかまではわからない。スキルについても同様である。
それでも、なんとなく自分の人となりがわかってもらえたような気がして、それ以上は詳しく話さない。「ご職業は?」と聞かれたとしても、「お仕事は?」と同じあいさつの延長線上なのだ。
「お仕事は?」「ご職業は?」には前後の会話がある
会話には必ず前後の状況がある。たとえば、突然「お仕事は?」と聞かれることはなく、自己紹介や商談など、何らかの場面で質問される。また、公私の違いによっても、同じ質問でも意味合いが変わってくる。
「お仕事は?」「ご職業は?」から職場をイメージする
「お仕事は?」「ご職業は?」と聞かれたときに、相手がどんな職場で働いているのかを知りたいのだろうと思って答える人はいないだろう。また、職場の状況を尋ねることは稀である。
ただ、仕事や職業を尋ねたときの答えから、無意識のうちに職場の状況をイメージしているに違いない。
例えば、「会社員」と答えた人の職場は、オフィスビルの中にあるイメージが湧くだろう。「公務員」と答えた人の職場は、役所の中にあるイメージが湧くはずだ。
このように、「お仕事は?」「ご職業は?」という質問は、単なるあいさつの延長線上にあるが、その答えから職場の状況をイメージすることができる。
そして、「職住」という語句を使うとき職場と住居の関係性を表しており、この関係性が重要な意味を持っている。「職住〇〇」というときにはどのようなイメージがあるのだろうか。
「職」からイメージする職場とは
「職場」という言葉からイメージする職場の様子は人それぞれ異なる。自分が経験した職場や実際に見たことのある職場をイメージするだろう。
ところが現場がある職場はなかなかイメージしづらい。例えば消防士の職場は消防署ではなく、火事の現場だ。CAの現場は飛行機の中だけではなく、地上でも数多くの訓練をしている。
また会社でのデスクワークも自分の机だけで仕事をしているわけではなく、フリーアドレスの職場もあれば、会議室や応接室での仕事も欠かせない。このように職場は多種多様なのだ。
「職住〇〇」という場合の「職」と「住」の関係性は、職と住の特性を理解することから始まる。「職」の中心は仕事そのものであるから、職に適した環境が必要になるのは言うまでもない。
仕事すなわち職を選ぶときに、職場の環境が選択条件の1つになる。この選択条件には人それぞれが職場に対するイメージがあり、たとえ異なっても許容範囲として認めるように、職場の環境も固定的ではない。
「職住〇〇」を考えるときには、この職場環境の許容範囲が重要になる。