人生後半戦は下り坂~現状維持と未来志向のバランスをとる

人生後半戦は下り坂~現状維持と未来志向のバランスをとる

世間では「人生後半戦」を悲観的に扱ったり、期待感を持たせたりしていますが、年を取るという事実は変わりません。変わるのはどういう見方をするかです。

人生後半戦は下り坂~現状維持と未来志向のバランスをとる

人生後半戦の現在地

人生100年時代とは「誰もが100歳まで生きる時代」ということではない。リンダ・グラットン、アンドリュー・スコットによる「LIFE SHIFT(ライフ・シフト)100年時代の人生戦略」(2016)で使われ、長寿社会を表すフレーズとして広がった。」

この中で「先進国の2007年生まれの2人に1人が103歳まで生きる『人生100年時代』が到来する」と指摘されたことから、日本国内でも政府主導で政策にも組み込まれた。

「人生100年時代の人生戦略」は、2000年以降の少子化時代に生まれた世代の人生戦略であり、現在の高齢者世代の人生戦略ではない。

現在の高齢者世代に役に立たないわけではないが、「人生100年時代」と現代の高齢者の人生観とは大きな違いがある。この違いから、今一度考えてみたい。

人生を2等分して、いつから人生後半戦を迎えるかと考えるのではなく、「人生100年時代」から考えて、50歳からが人生後半戦と考える方法がわかりやすい。

または、自分の人生を顧みて、人生後半戦の始まりを自分で決めることもできる。いずれにせよ、人生後半戦になるまでには「モノ、コト、ヒト」を伴った経験が積み重なっている。

自分が今、人生のどの位置にいるのか、人生後半戦のどの位置にいるのかを考えてみよう。

下り坂という現実

人生全体を俯瞰してみると、人生後半戦は下り坂である。ただし、人生後半戦になってからピークを迎える人もいれば、人生後半戦になる前にピークを迎える人もいるだろう。

ピークを迎えた時、誰もが下り坂が待っていることを実感する。同じ下り坂でも、人それぞれ違う。緩やかな下り坂もあれば、急激な下り坂もあるだろう。

山道の下り坂の勾配は自分で変えられないが、下る方法は自分で選べる。人生後半戦の下り坂も、自分自身がまだ経験したことのない道なので、目の前の道をただ下りがちだが、自分で選ぶこともできる。

山道では登りよりも下りのほうが事故が多い。それは登りの疲れに起因することが多い。人生後半戦の下り坂は、登りの疲れだけではなく、登りで得た経験が負担になることもある。

下りに役立つ経験もあれば、すでに役に立たなくなった経験もある。山道ではむやみに捨てることはできないが、人生では自分で決めることで、役に立たない「モノ、コト、ヒト」を手放すことができる。

いつか役に立つかもしれないと保ち続けることもできるが、下り坂の人生後半戦を進むときには取捨選択が必要になる。決心ではなく決断するのだ。

現状維持と軟着陸

人生は山道や旅路によく例えられる。高い所から低い所への移動は、山道だけではなく、空を飛ぶことでも移動できる。ただ、空を飛ぶだけではリスクが大きい。

山道を下るときも、空を飛ぶときも、身軽な方がリスクが小さくなる。もうお気づきかもしれない。人生の下り坂も身軽になれば、下る方法の自由度も高まりリスクも小さくなる。

ただし、身軽になるにも手放してはいけないものもある。物理的なモノの手放し方は比較的容易である。手放すコツは小さく分類して考えることである。AとBがあればCは不要、またはCがあればAとBは不要というように機能や用途の重複を明確にするとよい。

コトの手放し方は、記憶と記録に分けて考える。思い出は記憶であり、写真は記録である。その記録も近年はデジタル化が可能になったが、その手間を考えると、一部を手放すという決断も必要になるだろう。

モノやコトと比べて手放しにくいのがヒトである。相手がいることなので、一方的な手放し方はできない。時間が解決するのを待つか、連絡先を記録というコトに変換して時間の経過に委ねることもできるが、いずれにせよ関係性は断ち切れない。

このように身軽になれば、空を飛ぶことのリスクも和らぎ、悠々と空を巡りながら軟着陸することもできるのではないだろうか。

未来志向で上を向く

現状維持する「モノ、コト、ヒト」を決めた後は、進む方向を見通さなければならない。ここでのポイントは、「進むべき方向」なのか、「進みたい方向」なのかということである。両者が一致していれば問題はない。

「進むべき方向」とは客観的であり、「進みたい方向」とは主観的という違いがある。この2つの方向が一致していない場合は、ふらついたり、迷ったりする原因になる。

見通す方向とは左右だけではなく上下もある。例えると、山道では足元ばかりを気にしていると道を誤るように、時に振り返り、上方向を見ていたら間違いに気づいていたかもしれない。

空を飛ぶ際も同様に、風を読み、下降する力に抗して進路を保つには、常に左右だけでなく上下を確認する意識が求められる。方向を変えるときは上昇気流に乗り、着陸時も上向きの姿勢をとるのだ。

これはたとえ話であるが、人生後半戦の下り坂も、下ることばかりに気を取られてはいけない。常に「上を向く」こと、つまり未来へのビジョンを持ち続けることが大切である。なぜなら、何もしなければ自然と下っていくからこそ、意識的に望ましい未来の姿を描き続けるのだ。

未来志向とは、未来から逆算して、現在のあるべき姿をイメージすることである。人生後半戦には未来をイメージし続けることが肝要である。

職住隣接がバランサーになる

人生後半戦は下り坂である。ただ、下り坂が続くと下っていることを忘れてしまう。これは登りよりも下りが楽だからなのかもしれない。

いくら注意しても、忘れてしまうこともある。そのような時に頼りになるのが「バランサー」である。バランサーとは、均衡を保つ機械的装置ではあるが、転じて「バランスを保つ意識」という意味を持たせている。

バランサーは、バランスを維持する外付けのガイドフレームではなく、自らバランスを取る意識を持つという違いがある。

意識を持ち続けるためには、ライフスタイルの中に取り入れるのが最も効果的だ。「職住隣接」は、バランサーとしての役割を果たす。

「職住隣接」で仕事と生活のバランスを取るだけでなく、これから起こる健康や老化、モノ・コト・ヒトの見直しなど、自分が進む方向を定める基準や手助けになるに違いない。