仕事上の関係~非対面時代のコミュニケ-ション

職住隣接での人間関係~非対面時代のコミュニケ-ション

聞く速さは自分では変えられないが、読む速さは自分で変えられる。非対面コミュニケーションでは、話すより書くテクニックが重要になっている。

職住分離と職住一体

職住隣接は「自宅」を「仕事と生活」のベースとしている。このように説明すると、「何か商売をしているのか?」「在宅ワークをしているのか?」と聞かれたりする。

職住分離と職住一体の違いを説明し、今風にわかりやすく「ハイブリッドな働き方」と説明を加えるとなおさら混乱させてしまうこともある。仕事は職場で、自宅は生活の場というのが、まだまだ常識なのだ。

金融機関から融資を受けるときには、会社の所在確認や固定電話の確認が行なわれる。服装こそビジネスカジュアルでも違和感は感じなくなったようだが、固定観念化した常識は変わらないようだ。

仕事と生活、働き方と暮らし方の常識も変わっていない。平日に自宅に居ると「仕事は休みか?」と聞かれることもある。世間の常識からわざと外しているわけではない。自分に合った時間と場所の使い方をしているだけなのだが。

人間関係にも常識がある。ビジネスマナーと日常会話の習慣とは違うのも常識の1つである。ところが自宅を生活の場として考えている人にとっては、ビジネスタイムという感覚がない人もいる。

その逆に自宅で仕事をしているのなら、24時間いつでも仕事をしていると思っている人もいる。このような既存の常識の中で、職住隣接を行うには、仕事上の人間関係も変えなければならなかった。

職住隣接を始めたきっかけ

私が職住隣接を始めたきっかけは、今までの記事で両親の介護を行うためとお話ししてきた。実際には、それ以前に子供が生まれた時に仕事を辞め、1年ほど子育てを中心にして仕事をしていた時期がある。

私にとっては、仕事は生活の糧を得ると同時に、その時に一番大事なことを優先するという考え方をしている。子どもが生まれる時にも1年間は収入が減ることを前提にしていた。

両親の介護は想定していたものの、二人同時に介護をしなければならなくなるとは思っていなかった。このときに会社員でありながら、自宅で仕事を行うという選択ができなかったため、会社員を辞めた。

介護が終わった後は、自分が病気になり、1日に仕事に従事できる時間数が限られてしまった。それ以来、「頑張らない、我慢しない、無理しない」を自分に言い聞かせて、仕事と生活をしている。

最初は自分の意志で自宅で仕事をすることを選んだが、その後は、自分の意志だけではなく、その時々で仕事を選び、一番大事なことに時間を当てるようにして働いてきた。

現在でも、決められた時間で働くことはできないので、定時勤務が義務付けられたり、締め切りなどの期限が決められている仕事はできない。何事もベストではなくベターという選択を行うようにしている。

仕事上の人間関係は非対面で

新型コロナ禍では、直接対面でのコミュニケーションが行なわれず、ビデオ会議が行なわれるようになった。私は在宅介護を行い始めた時から、iPadのFaceTimeで打ち合わせを行うようにしていた。

移動時間を省き、打ち合わせを効率よく行うためだった。そのため、ビデオ会議を行う環境が整わない場合は仕事を行うことはできなかった。実際に30分の打ち合わせのために、1時間の移動と打ち合わせ時の無駄話はなくなり、予定した時間で終わるようになった。

なかには飲食のお誘いを受けることもあったが、丁重にお断りした。気を遣っていただく分、仕事の質を落とさないように心がけていた。このような人間関係は、以前からのお付き合いがあったがために理解していただくことができた。

新しい仕事や、新しい取引先を増やす際には、自分が置かれている状況を説明することに時間を要し、理解していただくことも難しかった。仕事を変えることも考えたが、働き方と仕事上の人間関係を変えることにした。

自宅外での仕事はしないことを前提に、仕事上の人間関係を再構築することにしたのだ。

コミュニケーションの質と方法

仕事上の人間関係で重視するのは「コミュニケーションの質と方法」と明言するようにした。特にコミュニケーションの質においては、例えば「なるべく早く」といった曖昧な表現は使ってはいけない。

同じように、「大丈夫です」という軽率な約束、「~ぐらいでいいでしょう」といった根拠のない即答、「~ですね」のような馴れ合いから生じる不適切なマナーなどを避けるようにしている。

相手が何を求めているのか、自分が何ができるのか、双方の輪郭が明確になるようなコミュニケーションを心がけている。

コミュニケーションの方法とは、直接対面で会話を行うコミュニケーションをできるだけ少なくし、コミュニケーションに機械的な要素を加えることである。デジタル機器の使用だけではなく、必要に応じて文章や図解を併用するコミュニケーション方法である。

特にデジタル機器を使うことに抵抗がある人が担当者になった場合や、電話や対面でのコミュニケーションを頻繁に求められる時には、仕事自体をお断りしたり、仕事よりも仕事の進め方を先に検討したいと申し出ることもあった。

現在では、私の希望するコミュニケーションで対応しているため、一緒に仕事を行う人も減り、収入も減った。一方で、健康に関わるストレスも激減したので、現在のコミュニケーションを今後も続けようと考えている。

人間には感情がある

非対面、非接触、そしてアナログな手法を排して自宅で仕事を行うと、人がいかに感情と時間に影響されて仕事をしているかに気が付いた。これは自分自身にも仕事相手にも当てはまる。

対面で仕事をしているときは、仕事相手の顔や手先、PCの画面だけを見て仕事をしているのではなく、視覚や聴覚から得られるあらゆる情報をもとに、伝えようとしている。デジタルでは、限られた範囲でしかわからないし、ボリュームを上げるか下げるかでも印象が変わる。

職場で仕事している時には、自分の時間よりも全体の時間を意識し、影響しあうことも分かった。上司がいるかいないか、仕事相手の時間に余裕があるかないかなど、否が応でも職場全体の時間軸からくる雰囲気を感じ取れる。自宅で仕事をしているときには、自分の時間だけを管理していればよい。

このように他の人の仕事の様子が目に入る環境で仕事をすることが、良いのか、悪いのかは、断言はできないが、少なくとも私の場合は、他の人の動きを気にしないほうが仕事に集中でき、同じ作業を短い時間で終えることがわかった。

おそらく、他の人の動きを見ながら仕事をする人にとっては、職住隣接は合わないかもしれない。