地域コミュニティとの関わり方~複雑な構造とコミュニケーション

地域コミュニティとの関わり方~複雑な構造とコミュニケーション

インターネットを使い始めてから20年、コミュニケーションに要する時間と距離感がまったく変わってしまいました。地域コミュイティだけは20年前と変わりませんが。

複雑な地域コミュニティ

「職住隣接」は「自宅をベース」にして、「仕事と生活」を「場と時間」で分離しながら、「自分」というリソースを効率よく有効に配分するライフスタイルである。

あらためて職住隣接の考え方を示したのは、「自宅をベース」にすることが想定外の人間関係に直面することになったからだ今では「自宅」であるが、元々は両親が住んでいた実家である。

両親の自宅介護を機に、当初は実家をベースにして仕事を行い、生活の場は別にあった。介護が終わった後は、実家の管理を行うために、仕事と生活の場を実家に移したので、現在は自宅となっている。

実家には学校を卒業するまで住んでいたので、地理的には馴染みがあった。朝早く家を出て、アルバイトを終えて帰宅するのが夜だったため、地域コミュニティとは無縁だった。

両親の介護を行っているときは、地域コミュニティの活動に関心を持つ余裕はなかった。しいて言えば、地域の介護認定担当者の面識があったくらいだった。

実際に自宅で仕事をし生活をするようになると、地域コミュニティとの接点も多くなり、その複雑さを理解するには時間がかかった。

制度的な複雑さ

地域コミュニティには、公的なコミュニティ、共同体としてのコミュニティ、民間のコミュニティの3つが関わっている。

代表的な公的コミュニティは、福祉関係の制度の配下にある。民生委員、社会福祉協議会は厚生労働省の管轄、小学校と中学校の校区は文部科学省の管轄で、コミュニティが構成されている。

共同体としてのコミュニティは、自治会や町内会で総務省の管轄にあり、地方交付金の対象になっている。地域コミュニティを指す場合は、この活動だと私は思っていた。

民間のコミュニティとは、非営利組織のNPO、ボランティア組織、地域に根差した営利団体がある。まちづくりなどの地域活動は、国土交通省の管轄になる。

私が混同したのは、同じ人が複数の団体に属し、似たような活動を行い、また名称も似ていることから判別がつかなかった。特に両親の介護を行っているときは同じ人が何度も訪ねてくるので混乱した。

日本全国、すべての地域が、私の住んでいる地域のような状態ではないと思うが、地理的な境界でコミュニティが現在の生活環境と一致しているかどうかは疑わしい。

時間経過による複雑さ

前述のような複雑さは初めから生じていたわけではない。時間経過による社会の変化を制度の変化で対応し、これが繰り返されることが複雑さを生み出した。

人口構造、住宅環境、交通事情が街並みの変化に大きく影響した。地域の産業や生活に直結する商いの形態にも影響を及ぼし、住み続ける住民も減少した。

これらは日本全国で同じように生じたわけではない。人口の集中地域と過疎地域で異なるだけではなく、地域コミュニティのあり方も実情に合わせて多様化した。

同じ地域コミュニティで長年住み続ける人は少なくなったが、制度だけが過去からの複雑さを引き継ぎながら、人材と財政の2つの問題を抱えているのが現実である。

人口減少が進むことを考えると、このままでは地域コミュニティの運営は困難になる。自治体の合併が繰り返されたように、地域コミュニティの合併を行ったり、法人化で組織として維持しようという案もある。

これらを実現するには時間がかかり、すでに生じている複雑さが解消するわけではない。地域コミュニティが目指す理想は掲げらえていても、「地域コミュニティに何を求め、何を解決すべきか」という現実的な視点が欠けているのだ。

地域コミュニティによる対応

地域コミュニティの基本は、「地域のことは地域住民で考え、対応しよう」である。まず、「地域」の地理的割り振りが適正かどうかを見直す必要がある。タワマンを始めとする集合住宅の増加、プライバシーと防犯意識のバランスの変化といった、現代的な地理的特性を考慮しなければならない。

「地域住民」とは、地域に住んでいる人を指すが、2021年の賃貸住宅の平均居住期間は4年1ヵ月である。賃貸住宅が多ければ多いほど地域住民の入れ替わりが多くなる。そのような地域でも地域コミュニティを運営する方法を考えるべきだろう。

前述のような地域環境の変化を踏まえて、長年住み続ける住民が考えることになるのだが、高齢化は避けられない。高齢化は考えるだけでなく、対応に要する行動にも支障をきたす。

地域コミュニティによる対応には限界がある。公務員のなり手が少ない、中小企業の継承者がいないのと同じように、地域コミュニティを考え、対応する人の減少は避けられないのである。

国の行政や地方自治体が行うとすれば、コンパクトシティ化が最善の策ではある。ただ、大都市と過疎地域は人口の分散と集中をそれぞれ行わなければならないというジレンマが生じる。

唯一、期待が持てるのはコンパクトシティ化のモデル地区に人材と財政を集中させ、成功モデルを創り、周囲に広げていくことだけだろう。

職住隣接による地域コミュニケーション

地域コミュニティの未来を考える前に、地域でのコミュニケーションを考える必要がある。対面コミュニケーションと紙や現金などのアナログコミュニケーションでは問題解決の糸口は見えない。

地域コミュニティを、行政を頂点としたピラミッド型組織や地方自治体を頭に置いたフラット組織ではなく、点と点を結ぶネットワーク組織として再編してはどうだろうか。

職住隣接というライフスタイルは、仕事も生活もネットワークとして考えている。家族関係も友人関係も点と点を結ぶネットワークとして実際のコミュニケーションを行っている。

多くの人が職住隣接というライフスタイルを理解し、その自律的かつネットワーク的な関わり方を地域活動に応用することで、実際の仕事と生活は変わらなくても、地域コミュニティでは大いに役に立つと考えられる。

仮に地域コミュニティのネットワークから漏れる人がいても、ネットワーク参加者が補うことができる。地域のコミュニケーションから考えてみれば何が適切かは自ずとわかるだろう。