働き方改革と職住隣接~自らを変える新しい働き方

働き方改革と職住隣接~自らを変える新しい働き方
M's Profile

「仕事をする」と「働く」の違いは、目的の違いです。労働力とは仕事をする人の不足よりも働く人の不足を意味しています。

ワークライフバランスと働き方改革

1)2007年(H19)「仕事と生活の調和憲章」策定・・ワークライフバランス
2)2019年(H31)「働き方改革関連法1」一部施行・・8つの法律の改正

2025年現在、ワークライフバランスは18年、働き方改革は6年が経過した。身の回りでの生活、特に多くの人が働き方の変化を実感しているだろう。ただ、どちらも終わりのない施策であることに変わりはない。

この2つの施策の始まりは、過剰な労働環境の是正であるが、本質的には人口減少と少子高齢化による労働力の不足と経済の成長を促すために行った施策である。人間性を取り戻す社会環境をつくろうということから始まったわけではない。

2025年3月現在、経済成長は取り戻しつつあり、賃金の上昇も見られる。しかし、物価の上昇により、社会生活が豊かになったと感じている人は少ないだろう。

職住隣接は働き方と暮らし方、そして人生そのものを見直すために、国の借金の負担という負の財産を未来に残すであろう人生後半戦を迎える方々に伝えたい。「もっと働こう」と。

労働力不足への対応

職住隣接を理解するためには、従業者として働く人だけではなく、事業主側の視点も必要である。事業主側としては、事業主と従業者の双方にメリットがなければ、職住分離の働き方を継続したいと考えにくいのは当然である。

それは従業者の囲い込みを行っていることになり、現状で事業を継続するための人不足は変わらない。これは人不足であり、人材不足や労働力不足2とは異なることを事業主は理解する必要がある。

人材とは職能がある人ということで単純に人数を意味しない。また、肉体的作業や知的作業を含む労働力は、多くの場合機械に置き換えることができる。

このように考えると、労働力の不足とは現状維持を行うことが前提であるが、現状維持では経済成長は望めないし、経済維持はグローバルな環境では他国との比較になるので経済の低下と同じになる。

ワークライフバランスと働き方改革は、本質の解決策ではなく、経済成長を遂げることによって得られる結果である。労働力不足の解消は、数年単位の施策ではなく、持続可能な施策でなければならない。

仕事と生活を分ける

「仕事と生活を分ける」という考え方は、事業主も従業者の双方が同じ考え方だろう。ただ、これは物理的な場所を分けることで今までは成立した。現在は個々人がスマホを持つICT時代である。物理的場所を分けることの効果は薄れている。

ICT時代には仕事と生活の関係だけではなく、個人間のプライベートも境目が曖昧になっている。仕事と生活と個人の関係を明確に分けることは難しい。ICT時代は人間の関係性を変えたのである。

仕事での個人間の関係は、仕事関係であって、人間関係ではない。つまり、仕事上のコミュニケーションは、個人と個人の間に機械的なパススルー3が必要になってくる。例えばメール連絡などのようにである。

人間関係のない職場は殺伐とすると思うかもしれないが、人間関係の濃い職場は生産性の低い職場となりかねない。現在の仕事は機械なしでは考えられない仕事がほとんどである。そのような中で人間同士のコミュニケーションが生産性を上げていると言えるだろうか。

もちろん、人間性丸出しのコミュニケーションが不要だと言っているのではない。ただし、そのようなコミュニケーションこそ、職場のどこでも行うのではなく、適した場所で行うべきだろう。

「変わる」ではなく「変える」

働き方には自発的に働く場合と受動的に働く場合がある。自発的に働く場合の働き方は本人が決めることであるが、受動的に働く場合はすでに決められた働き方になる。

すでに決められた働き方とは、集団で働く場合の働き方であることが多く、汎用的である。しかし、時代に適応した働き方に変えるには時間がかかるという難点がある。

集団で働く場合には個別に働き方を変えると管理が難しくなるので、一斉に変える必要がある。働き手にとっては時代に合った働き方を望んでも「変わる」まで待たなければならない。

生産性を上げるためには、個人の能力が最大限発揮できるような働き方が望ましい。「変わる」まで待つことなく「変える」必要がある。これは、働き方を個人単位で組み合わせることで可能になる。

過去の仕事場を振り返れば、皆で1台の電話が1人1台になり、皆で1台のPCが1人1台になり、現在ではひとりひとりがPCとスマホを持つ時代になった。変わるたびに生産性が上がったのではないだろうか。

「変わる」ことに躊躇するのは資金的なことよりも、全員が同じ能力ではないことだろう。新しいことを自ら学ぶという気持ちがなければ空回りしてしまうこともある。

職住隣接の実現に向けて

業種、職種、職場環境が異なるすべての人が、職住隣接という働き方に変える必要はない。職住隣接のほうが能力を発揮できる環境である人から職住隣接に変えればよい。

そのためには、職場内に職住隣接と同じ環境の個室スペースを作ってはどうだろうか。職場内で実体験すれば、良いことも悪いことも共有できるし、その場で仕事も可能である。

ワークライフバランスや働き方改革で変わるのは働き方であり、暮らし方や人生への影響が語られることは少ない。それは事業主側としては、暮らし方や人生の影響は個人的なことだと考えているからだ。

事業主側も柔¥柔軟な働き方を勧めるなら、自宅での働き方のモデルやパターンを示すべきではないだろうか。

個人事業やフリーランスなどの独立事業者も、今一度自分の働き方が能力を発揮できる環境になっているか見直すことが必要かもしれない。場所と時間が自由ではなく、その結果、何を得たかが重要なのである。


働き方改革関連法、労働力不足、パススルーとは?

  1. 働き方改革関連法
    9つの対策ポイントを分かりやすく解説!働き方改革関連法(契約ウォッチ)
    https://keiyaku-watch.jp/media/hourei/work-style-reform/ ↩︎
  2. 労働力不足
    補足:労働力不足とは労働力人口の不足を意味し、15歳以上の従業者、休業者、働く意思があり働くことができる人の合計である。したがって働く意思がない人、働くことができない人は含まれていない。
    労働力の不足を補うには、労働時間を増やす、労働能力を向上する、機械に転換するの3つがある。いずれも可能なのだが、コストがかかることで実現できない企業に併せて法制化されているため現実的ではない。また、現状の雇用維持が前提で労働力の強化を唱えている国会の準備で官僚のブラック労働が指摘されている。 ↩︎
  3. パススルー
    文字通り「通過」を意味する。機械的な通貨処理を行うことで無駄を省くことができるの意。 ↩︎
職住隣接物語