契約形態と職住隣接 ~ 多様な働き方に対応する基盤づくり


「労働基準法、就業規則、雇用契約書」の内容は知らなくても、労働条件は知っている。
でも、それって明文化されていますか?

仕事にとって契約関係は、「仕事をする」つまり「働く」時の基礎的な約束ごとになる。サラリーマン、フリーランス、ボランティアなど、すべての事業に契約がある。
職住隣接では、事業を主催する側を「事業主」と呼び、事業主の下で働く場合を「従業者」と呼ぶ。それぞれの組織や団体で呼び方は異なるので、最初の段階で定義する。
職住隣接で考えられる契約形態
人生後半戦に考えられる働き方は、事業主として働く場合と従業者として働く場合がある。事業主として働く場合は、経営者、自営業者、個人事業者などがある。
従業者として働く場合には、組織や団体に属するので、正社員やアルバイトを含め従業者となる。事業主間の事業契約と事業主と従業者の契約を雇用契約という。
契約には直接契約と間接契約1がある。事業主間の契約は当事者同士の直接契約のほかに、本契約の下請けとして契約することがある。この場合は契約範囲の確認に注意が必要になる。
事業主と従業者の雇用契約の場合も、職業紹介業者や派遣業者が仲介業者となる間接契約がある。この場合も業務内容や勤務形態の確認を怠ってはならない。
現在では多様な勤務形態がある。同じ職場で同じ仕事をしていても、正社員、派遣、個人事業のアルバイトなど、様々な人が共に働いている。
今一度、事業契約や雇用契約で自分の労働に関する契約がどのようになっているかを確認するのが、もっとも手っ取り早い契約関係を学ぶきっかけになる。
従業者としての職住隣接
すでに従業者として働いている場合は、現在の契約が終了する時期を確定することから始める。人生後半戦でもっとも多いのが「定年」という区切りだろう。独立しているならば、何年後に区切りをつけるか想定しておくことが必要になる。
生計を維持するための仕事に従事している場合は、年齢に応じた平均余命も考慮したほうがよい。このように将来の区切りから現在を考えることをバックキャスティング思考と呼ぶ。現在と同じように働ける期間を想定しなければ、雇用契約でも事業契約でも適切な期間設定はできない。
新しい仕事に取り組む場合も基本的な考え方は変わらないが、新たな仕事には新たな働き方や契約形態がともなう。今までの経験が新たな仕事に活かせるかもしれないが、まったく同じではないことを常に意識しておかなければならない。
また、現在の仕事と並行して別の仕事を行うという選択肢もある。その場合は、それぞれの働き方や契約条件を個別に管理し運用することになる。兼業、複業、副業など呼び方は様々だが、複数契約で働く点は共通している。
仕事の管理は仕事の一部だが、働き方の管理は人生にも関わる。職住隣接を「人生の一部としての働き方を管理する場」として捉えてみてはどうだろうか。
独立事業者としての職住隣接
独立事業者とは、自営業者、個人事業者、フリーランスなどの組織に属さない事業者を指す。また、会社役員も委任関係に基づく立場であるため従業者には該当しない。
事業主でもある独立事業者は基本的に定年がなく、自分自身で事業に従事する期間を決めることが可能である。ただし、一部の事業契約では保証契約が含まれる場合があり、その期間中は契約終了まで責任を果たす必要があるため、区切りをつけるタイミングには注意が必要である。
独立事業者として働いた後に従業者となったり、別の仕事で再び独立事業者になることは珍しくない。むしろ、事業期間と休業期間を交互に設計するライフスタイルも選択肢として考えられる。
一方で、収入を安定させるため複数の事業契約を結ぶ場合、契約管理の負担が増加する可能性がある。契約期間に空白が生じれば収入が不安定になる懸念もある。そのため、収入面でのリスクを軽減するには、契約管理を厳密に行う必要がある。
収入面では不安定さが伴うものの、支出については柔軟性を持たせることが可能だ。このような柔軟性こそ独立事業者の魅力である一方、その運営には計画性と慎重さが求められる。
独立事業者にとって職住隣接は柔軟な働き方を実現する手段であり、多くのメリットを享受できる環境だ。独立事業者に最適な働き方と言えるだろう。
職住隣接で契約するときのポイント
職住隣接の働き方には、雇用契約や事業契約といった形式的な契約形態だけでなく、地縁や血縁2を基盤とした契約関係にない働き方も含まれる。地域活動やボランティア、家庭内での家事労働などがこれに該当する。
これらの働き方は、必ずしも法的な契約によって定義されるものではないが、「仕事をする」という意味では、一定の責任や役割を果たすことが求められる点で共通している。職住隣接では、このような非契約型の働き方にも対応が可能になる。
「働く」という行為は、契約の有無にかかわらず責任をともなう。契約関係に基づく仕事では、その内容を守ることが大前提となる。一方で、非契約型の働き方でも、役割や期待に応える姿勢が必要だ。
職住隣接はこれらの多様な働き方を調和させ、一人ひとりのライフスタイルに合わせた働き方を可能にする。
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