職住隣接でのコミュニケーション術~仕事と生活の使い分けのコツ~


仕事と生活のスペースを独立させても、外部からのコミュニケーションに仕事と生活の区別をつけていなかった。思い切って行ったこととは・・

私が経験した職住隣接の難題
新型コロナ禍でのことである。私は仕事スペースと生活スペースを独立させているので、どちらのスペースにいるかでコミュニケーションの方法を分ける方法が身についている。
仕事スペースでは、短時間で効率的なコミュニケーションを心がけている。主にメールや仕事用のチャットを活用し、必要に応じてオンライン会議やボイスメールも使用する。重要な案件については、PREP法を用いてコミュニケーションを行う。これは現在も変わらない。
PREP法とは、ビジネスコミュニケーションで広く使われている方法である。最初に結論や主張を述べる「Point」から始まり、その結論に至った理由を説明する「Reason」、さらにデータや状況説明などの具体例を示す「Example」と続く。そして最後に、もう一度結論を確認する「Point」で締めくくる。この4つの要素で構成される方法だ。
私の仕事時間は午前中から14時ころまでだが、この時間帯に予期せぬ生活上のコミュニケーションが入ることが悩みの種となっていた。
地域コミュニティとのコミュニケーション
特に困ったことが2つある。1つは、仕事時間に地域コミュニティの方々から突然の訪問を受けることだ。「あいさつ>用件>世間話」という流れで進み、仕事への集中力が途切れてしまう原因となっていた。
もう1つは、地域コミュニティに限らないが私的な用件での電話である。仕事時間中の電話は留守電に設定しているものの、ほとんどが録音せずに切ってしまう。このようなことは地域コミュニティだけではなく電話ではよくあることだが、後でかけ直すと不在か、用件済み、連絡のみということが多かった。
その後、新型コロナ禍が続くにつれて、対面でのコミュニケーションは書面での連絡に変わった。しかし、今度は別の課題が生まれた。用件はわずか1~2行で、残りはあいさつ文と連絡先の電話番号だけという状況が続いたのである。結局、電話をかけることになるのだった。
コミュニケーションの目的と方法
コミュニケーションは情報の流れによって、一方向、双方向、複数回に分けられる。例えば、連絡のように、発信者から受信者へ1回限りの情報伝達がある。次に、出欠を確認するような往復が必要な双方向の伝達がある。
そして、多くの事項を伝えるときは双方向のコミュニケーションを複数回に渡って行う必要なときがある。また、緊急性の有無によってもコミュニケーション方法は異なり、急を要する場合は電話など即時性の高い手段が選ばれる。
仕事上では、このようなコミュニケーションが整理されている。報連相(報告・連絡・相談)や確連報(確認・連絡・報告)のように定型化され、メールやチャットツールの使用が指定され、緊急時のみ電話を利用するという具合だ。
生活上では、コミュニケーションを取る者同士の親密度によって変わる。日常的に親密度が高い同居家族と地域コミュニティではコミュニケーションが異なる。ところが、実際の地域コミュニティでは、本来の親密度に関係なく、まるで親しい間柄のようなコミュニケーションになることがある。
このような状況で私が得た結論は、相手に合わせるのではなく、自分がどのようなコミュニケーションを取りたいかを前面に出して、相手の反応を見ることだった。
その結果、対面と電話だけのコミュニケーションしか取ることができない人とは、業務や重要な用件以外での日常的な付き合いを控えることにした。とは言っても、家族や親類、親しい友人知人だけにプライベート用の電話番号を教えている。
効果的なコミュニケーションの実践
コミュニケーションを取るときに重要なことを考えてみた。ネットで調べているうちに、英会話教室のサイトに私が考えていることが的確にまとめられていたので紹介したい。
このサイトでは、効果的なコミュニケーションの要素をP.R.E.Pとしてまとめている。(前述のPREP法とはまったく異なる)
Pは「Positive(積極的)」、Rは「Respectful(敬意を表す)」、Eは「Engaging(人を引きつける力)」、そして最後のPは「Persuasive(説得力)」を表す。
これを私流の解釈をし、職住隣接のコミュニケーションに当てはめると次のようになる。
・Positive(積極的な姿勢)は、考えや意見を述べる時はいつでも積極的に行動すること
・Respectful(敬意を表す)は、見返りを求めず、相手を尊重する話し方をすること
・Engaging(人を引きつける)は、相手の理解度や興味を確認しながら進めること
・Persuasive(説得力)は、説得力のある頼み方を意識することである。
日本人は海外からの旅行者にとても親切だと言われることが多い。それは、敬語を学ぶことにより、Respectful(敬意を表す)を身に付けているので、自然に態度に表れるからだと考えられる。
一方で、Positive(積極的な姿勢)、Engaging(人を引きつける)、Persuasive(説得力)については、意識的な努力が必要かもしれない。
コミュニケーションツールの選択
「対面で直接」というコミュニケーションが基本と考えている人もまだ多い。実際には文字が発明されてからは、遠距離のコミュニケーションと時間差のコミュニケーションが可能になった。
通信の発達によって文字によるコミュニケーションは距離的にも時間的にも格段にスピードアップした。そして今では、音声や動画が文字の代わりとなり遠距離・時間差のコミュニケーションを可能にしている。
このようなコミュニケーション媒体の変化により、「対面で直接」から「書面で間接」に変わり、「通信で随時」に変わり、さらに様々なデジタルツールが通信手段として存在する。
このような現状を踏まえると、すべての媒体、方法、手段に精通することは簡単にはできない。そのため、多くの人が利用する媒体、方法、手段が共通コミュニケーションとなる。コミュニケーションの基本は人間関係であり、共通コミュニケーション手段という「場」を持つ人同士が人間関係を作るようになる。
職住隣接のコミュニケーション
最後に、私が行なっている職住隣接でのコミュニケーションを紹介する。正しいとか、良いということではなく、行っている事実だけをお話しするので、参考になればと思う。
まず、人間関係を3つのグループに分けた。仕事関係、近親者関係、生活実需関係である。「その他」は積極的なコミュニケーションをしない関係とし対象外とした。
仕事関係は、メールとビジネスチャット(文字・動画・音声)で、電話は限られた人しか通じないように、電話アプリと連絡先に設定した。ちなみにこれは固定電話ではなく仕事用スマホを固定電話がわりに使っている。
近親者関係とは、家族、親類、親しい友人に限った。疎遠になっている古くからの友人は知人とし、定期的に連絡を取る親しい知人は友人とした。葬式に来る可能性の有無を基準にした。プライベートの電話番号とLINEでつながっている。
生活実需関係とは、実際に生活していくうえで、連絡をとれるようにしておかなければならない関係者である。病院関係、保険や銀行関係、家屋のメンテナンス関係などである。病院にだけはプライベートの電話番号、その他は仕事用の電話番号を教え、確実に留守電に伝言を残してくれるかどうかを基準にした。
この分け方に入らなかった旧知の人間関係や連絡先は、かなり思い切って対象外とした。
実際の対応状況はというと
では、懸案の地域コミュニティとの連絡と直接訪問への対応方法は下記のようにしている。
まず、地域コミュニティとの関係は距離を置くことにした。これで不在時に私のところで回覧板が留まることもなくなり、留守電にも録音されない場合は、特に自分からアクションを起こすことはなくなった。
直接訪問の対応には、玄関先に防犯用のカメラを訪問者が見えるように設置した。これだけで、応答がない場合はそのまま帰る率が高くなった。必要に応じて書面などが郵便受けに入っている。
郵便受け一体型の宅配ボックスを設置した。長時間不在時の郵便受けに溜まったままになったり、置き配の放置などの心配がなくなった。防犯用カメラで帆言うもん車を確認できるので、必要であれあが後日に対応することにしている。
要するに人間関係を見直して減らしたということなのだが、なにかの参考になれば幸いである。